国際研修「文化遺産の災害危機管理」とは?
国際研修「文化遺産の災害危機管理」は、2005年1月に兵庫県神戸市で開催された国連防災世界会議(WCDR)の「文化遺産の危機管理に関する特別テーマセッション」で採択された提言のフォローアップとして実施されました。この勧告の中で、学術界は、有形・無形を問わず、文化遺産を災害危機管理に組み入れる科学的研究、教育、訓練プログラムを開発する必要性を提唱しました。また、第30回世界遺産委員会会合(2006年7月、リトアニア・ヴィリニュス)においても、世界遺産における防災文化の構築のために知識、技術革新、教育を強化することの重要性が改めて強調されました。
国際研修の目的と方法
本研修の主な目的は、文化遺産の災害危機管理の様々な側面について、理論的および実践的な知識を提供することにあります。特に、この研修では、次のような学際的なトレーニングを行います。
- 災害を引き起こす可能性のある自然災害や人為的な災害に対する脆弱性を分析することにより、有形・無形、動産・不動産の文化遺産の統合的リスク評価の実施
- 文化遺産の災害危機管理について、リスクの低減、災害への対応、災害からの復旧を目的とした様々な対策を盛り込んだ統合的なシステムの構築
- 災害危機管理・開発のための地方・都市・国・地域レベルの計画や政策、また人道的対応や復興メカニズムに対応した文化遺産の災害危機管理計画の策定
- 費用便益分析、価値評価、予算編成、意思決定者から地域コミュニティに至る様々なステークホルダーとのコミュニケーション方法など、文化遺産の災害危機管理のための実践的なツール、方法論、スキルの習得
- 国や地域の状況に応じて、文化遺産の特性や災害の性質に基づいた包括的な災害危機管理計画の策定に必要な制度的能力を構築するための国際的な科学的支援ネットワークの強化
同国際研修は、講義、現場視察、ワークショップ、ディスカッション、チームプロジェクト、個人/グループ・プレゼンテーションで構成されています。参加者は研修期間中、積極的に参加することが期待され、文化遺産保護の学者や専門家間の協力関係の構築とネットワーク構築を促進することが期待されています。国際研修は、ユネスコと文化財の保存と修復のための国際センター(ICCROM)の支援を受けています。
「文化遺産における災害の危機管理」に関する国際研修では、講義、現地視察、対話型ワークショップによる演習で得た知識をもとに、参加者が自国の文化遺産や博物館を事例として、その国の社会・経済・制度に沿った災害危機管理計画の概要を策定し、文化遺産の災害危機管理に関する計画策定能力を高めることも目的としています。そのため、参加者は来日前に文化遺産、ハザードの特徴、現地の状況などに関するデータ・情報を収集することが求められています。